鑑草 中江藤樹著
−婦道訓話集−
(現代語訳:青山明史)
2011/5/11 更新

はじめに

鑑草(かがみくさ)は中江藤樹 の著作で、婦女子の教育のための訓話集です。
訓話は藤樹自身の創作ではなく、漢文のいくつかの訓話集を元にしています。これに藤樹自身が序文と各話ごとの解説文を加えています。もともとは藤樹が妹の結婚する時に嫁としての心得を教えるために書いたものらしいです。これが江戸時代の正保四年(西暦1647年)に出版されました。正確な発行部数は不明ですが、その後の何回か版を作り直して発行されているのでけっこう広く読まれていたようです。
鑑草は全六巻からなり、八つのテーマ別に訓話を並べています。そのテーマは以下の通りです。

一) 親孝行の大切さ(ただし嫁入りする女性を対象としているので、夫の父母、特に姑への孝行が強調されています)
二) 節を守るべきこと(夫を裏切ってはいけないということ)
三) 嫉妬しないこと
四) 正しく子を育てること
五) 継子も実の子と同様に愛すべきこと
六) 家の使用人を大切にすること
七) 夫の兄弟の嫁と仲良くすること
八) 金銭に執着しないこと

藤樹の故郷の村では、江戸時代から長い間にわたって、嫁入り前の娘が「鑑草」を読む習慣があったそうです。そしてその村では、犯罪はただの1件も発生しなかった、という記録があるそうです。

中江藤樹の生涯について詳しく知るには以下の著作をお読みください。
 ・「代表的日本人」  内村 鑑三著 (岩波文庫)
 ・「小説 中江藤樹」 童門 冬二著 (人物文庫)
 
ここでは、鑑草の一部を私が現代語訳したものを載せていきます。
訓話自体は昔の中国のものなので、現代の日本人の感覚とは合わない部分もあると感じました。しかし各話に添えられた藤樹の評は現代にも通じる普遍的な内容が多くあると思います。

なお、中江藤樹の代表的な著作「翁問答」の現代語訳は中央口論社の「日本の名著 (11) 中江藤樹・熊沢蕃山」に収録されています。




 目 次

序文

第一巻 
 孝行と不孝の報い

  

  第一話 姑の死を望んだ不孝な嫁 

    第二話 三代の孝行な嫁

  第三話 三人の不孝な嫁に天罰がくだる

第二巻
 守節と背夫の報い

  

  第一話 死別した夫に節を守り通した妻

  第二話 亡き夫を手本として子供を立派に育てた母

  第三話 貧しい夫を見捨てた妻

  第四話 不義密通していた男の改心

  第五話 強欲な夫と賢明な妻

第三巻
 不嫉と妬毒の報い
  

  第一話 宋国の女宗

  第二話 妾の子を殺した妻

  第三話 女中に嫉妬した妻への天罰

第四巻
 教子の報い
   

  第一話 胎教で聖王を産む

  第二話 孟母の教え

  第三話 二程子の母

  第四話 貧しい母が名将を育てる

  第五話 君子を育てる覚悟


第五巻
 慈善と残悪の報い

  第一話 魏国の慈母

  第二話 残酷な継母

  第三話 国賊になった継子

  第四話 子殺しの報い

 仁虐の報い

  
 
  第一話 羅夫人の粥

  第二話 鶏の言葉


第六巻
 淑睦の報い

  

  第一話 王覧の妻

 廉貪の報い

  

  第一話 周才美の枡


 ※各話の題は原書にはなく、勝手につけたものです。


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